
外壁材として採用されることの多いALCパネルは、軽量性や耐火性、断熱性に優れることから、戸建て住宅やビル、工場など幅広い建築物で活用されています。
しかし、ALCにはメリットだけでなくデメリットもあります。
そこで本記事では、ALCの基本的な特徴からメリット・デメリット、主要メーカーまで徹底的に解説します。
これから家づくりやリフォームを検討されている方は、素材選びの参考にしてみてください。
外壁材のALCとは?
外壁材として使用される「ALC」は、軽量でありながら高い耐火性や断熱性を持つ優れた建材です。
建築現場ではパネル状の状態で使用されるため、工期を短縮できたり品質が安定したりするメリットがあります。
ここでは、そんなALCの基本的な構造や種類、そしてほかの外壁材であるサイディングとの違いについて詳しく解説します。
ALCパネルの特徴
ALCパネルとは、セメント・けい石・石灰などを原料にして作られた「軽量気泡コンクリート」のことです。
内部に無数の気泡を含む構造になっており、一般的なコンクリートと比べて非常に軽量です。
そのため、建物への荷重が少なく、耐震性の向上にもつながります。
また、断熱性や耐火性、遮音性にも優れており、外壁材として高い性能を発揮します。
パネルは工場で規格化されて製造されるため、品質が安定しており施工の効率化が実現できます。
ALCの種類
ALCには主に「厚型パネル」と「薄型パネル」の2種類があります。厚型パネルは主に鉄骨造やRC造に用いられ、高い強度と耐火性を備えた構造用外壁材です。
一方、薄型パネルは木造住宅に対応した軽量タイプで、住宅向けに開発された製品が増えています。
例えば、旭化成建材の「ヘーベルライト」は一般住宅にも使える薄型ALCとして知られています。
このように、ALCは建物の構造や用途に応じて、最適な種類を選ぶことが重要です。
ALCとサイディングの違いについて
ALCとサイディングはどちらも外壁材として広く使用されていますが、性能や施工性には大きな違いがあります。
ALCは軽量で耐火性・断熱性に優れていますが、防水性がなく塗装やシーリングが必須です。
サイディングは多様なデザインが選べて価格も比較的安価ですが、耐火性や断熱性ではALCに劣る傾向があります。
性能重視ならALC、コストやデザイン重視ならサイディングが適しています。
外壁材ALCのメリット
ALCは性能面で多くの優れた特性を持っているため、一般住宅はもちろんのこと、商業施設や工場などにも幅広く採用されています。
軽量であることから建物の耐震性向上にもつながり、断熱性・遮音性・耐火性にも優れている点が魅力です。
そこでここからは、ALC外壁が持つ具体的なメリットを一つずつ見ていきましょう。
軽量で建物に負荷をかけにくい
ALCパネルは多孔質構造により、通常のコンクリートに比べて非常に軽量です。
具体的には約1/4程度の重量しかなく、建物の構造体への負荷を大幅に軽減できます。
この軽さは、特に地震時の揺れに対して建物全体への影響を抑える効果があり、耐震性能の向上にもつながります。
また、パネルであることで施工時の扱いやすさにも優れており、工期短縮や作業効率の向上にも貢献します。
高層建築や一般住宅においても、構造的な安全性を高める外壁材として注目されています。
耐久性に優れている
ALCパネルは耐久性が高く、適切なメンテナンスを行うことで50年以上の長寿命が期待できる外壁材です。
パネル自体は経年劣化しにくく、強風や衝撃にも比較的強いのが特長です。
ただし、シーリング材や塗装などの防水処理は経年で劣化するため、10~15年ごとのメンテナンスが必要となります。
それでも、パネル自体の性能が長く維持されることから、外壁材としての信頼性は非常に高いといえるでしょう。
耐火性に優れている
ALCは不燃性の原材料で構成されており、万が一の火災時でも有毒ガスを発生させず、延焼のリスクを大幅に抑えることができます。
国土交通大臣の認定を受けた耐火建材として高い信頼性を持っており、防火地域や準防火地域での採用実績も豊富です。
隣接する住宅との距離が近い都市部や、法的に耐火構造が求められる建物では、ALCの耐火性能は大きなメリットとなります。
火災への備えを重視したい住宅にとって、非常に適した外壁材です。
断熱性・遮音性に優れている
ALCは内部に無数の気泡を持つ多孔質構造であるため、空気層による断熱効果が非常に高く、夏は熱を遮断し、冬は室内の暖気を逃がしにくい特性があります。
加えて、この構造は遮音効果にも優れており、外部の騒音を軽減するのに役立ちます。
住宅密集地や幹線道路沿いに住む方、静かな室内環境を求める方にとっては大きな利点となります。
冷暖房効率が上がることで省エネ効果にもつながり、快適で経済的な住環境を実現します。
有害物質ゼロで安全
ALCは、セメント・石灰・けい石などの無機質素材から作られており、製造過程でもアスベストやホルムアルデヒドといった有害物質を一切使用していません。
そのため、施工時や使用中に健康被害を引き起こす心配がなく、子どもや高齢者がいる家庭でも安心して使用できます。
また、廃棄時にも環境への影響が少ない建材として評価されており、SDGsや脱炭素社会を意識した住宅づくりにも適しています。
人と環境にやさしい素材として信頼性が高いのが特長です。
デザインのバリエーションが豊富
ALCパネルは塗装仕上げを基本としているため、色や質感の自由度が非常に高いという魅力があります。
吹き付け仕上げ、ローラー仕上げなど、施工方法によって外観の印象を自在に変えられます。
また、最近ではモダンやナチュラル、和風建築など、さまざまなデザインスタイルにマッチする意匠性の高いALC外壁が登場しています。
建物の外観にこだわりたい方や、オリジナリティのあるデザインを求める方にとって、ALCは非常に柔軟性の高い外壁材です。
外壁材ALCのデメリット
多くのメリットを備えるALCですが、すべての住宅にとって万能とは限りません。
防水性の低さや施工コストの高さ、メンテナンス面での注意点など、事前に理解しておくべき短所も存在します。
そこでここからは、ALC外壁の代表的なデメリットと、それらにどう対処すべきかを解説します。
防水性が低く塗装が必須
ALCパネルは内部に無数の気泡を含む多孔質構造であるため、雨水を吸収しやすいという性質があります。
パネル自体に防水性がないため、必ず表面に防水塗装を施さなければなりません。
この塗膜が劣化すると、水の浸入を招き、内部の鉄筋腐食や躯体への悪影響につながるおそれがあります。
そのため、美観の維持だけでなく、建物を長持ちさせるためにも定期的な塗装管理が重要です。
パネル継ぎ目のシーリングが多い
ALCは規格サイズのパネルを組み合わせて施工するため、パネルとパネルの継ぎ目には必ずシーリング材を充填する必要があります。
このシーリング材は紫外線や雨風にさらされることで徐々に劣化し、ひび割れや剥離を起こします。
これを放置すると、そこから雨水が浸入して建物内部の劣化を招くリスクがあります。
10年程度の周期で打ち替えが必要となるため、ほかの外壁材に比べてメンテナンス箇所が多く、維持管理の手間がかかる点はデメリットです。
施工費用が高い
ALCパネルは建材そのものの価格が高めである上、防水塗装やシーリング、金物取付など副資材や工程が多くなるため、施工費用全体も高くなりがちです。
一般住宅に導入する場合は、窯業系サイディングなどほかの外壁材に比べてコストがかかるケースもあります。
また職人の技術力が必要で、施工対応できる業者が限られる地域では、さらに費用が高騰する可能性もあります。
石張り仕上げが難しい
ALCパネルはそのままでは重い外装材との相性がよくなく、特に天然石やタイルなどを直接貼り付ける石張り仕上げは制約があります。
下地としての密着力が不安定であり、重量のある仕上げ材を支えるには専用の下地を設ける必要があります。
そのままでは施工後の剥離リスクも高くなるため、通常の外壁材よりも設計と施工の難易度が上がります。
外壁材ALCを取り扱っているメーカーについて
日本国内でALCパネルを製造しているメーカーは、以下の3社です。
・旭化成建材株式会社
・ケイミューシポレックス株式会社
・クリオン株式会社
・旭化成建材は、ALCパネルの代表的なメーカーです。
高い耐火性や断熱性、耐久性が特長で、多くの建築物に採用されています。
・ケイミューシポレックスは、ALCパネル「シポレックス」を製造・販売しています。
1960年代から日本でのALC製造を開始した老舗メーカーであり、長年の実績と信頼があります。
・クリオン株式会社は、独自の技術を生かした高品質な製品を提供しています。
東京スカイツリーにも採用された実績があり、信頼性の高い製品を提供しています。
これらのメーカーは、それぞれ独自の技術や製品ラインナップを持ち、建物の構造や用途に応じて最適なALCパネルを提供しています。
選定の際は、建物の特性や求める性能に合わせて、各メーカーの製品を比較検討することが重要です。
まとめ
ALCは、軽量でありながら耐火性・断熱性・遮音性に優れた高性能な外壁材です。
多孔質構造による省エネ効果や、環境・健康に配慮された安全性の高さも魅力です。
一方で防水性が低いため、塗装とシーリングの定期メンテナンスが必要で、施工コストも高めです。
サイディングなどほかの外壁材と比較しながら、自身の住宅の構造や予算、求める性能に応じて慎重に選ぶことが大切です。
信頼できるメーカー製品を選定し、適切な施工と維持管理を行えば、長期的に快適で美しい外壁を保つことができるでしょう。
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